本年、6月に妻が胃の調子が悪いと言って、お世話になっている二宮胃腸内科クリニックへ行き胃の内視鏡検査を行ったが結果は異常なしであった。さらに医師は念のためとエコー検査で胃の周辺を診てくれた。はっきりしない影があるとのことから、医師の勧めで大学病院か市立病院で精密検査を受けた方が良いとあり紹介をお願いした。
早速、東海大大磯病院を紹介していただき、消化器内科に受診した。担当医師は紹介状を見て一から検査をやり直すとあり、初日は数種の検査を受けた。数日後、妻に娘達と付き添い検査結果を一緒に聞いた。医師曰くレントゲン及び各種検査の結果、癌が疑わしいいとあった。医師はさらに癌を特定する各種の検査を実施する旨説明があり指示に従った。当日、辛い検査を妻は受けた。その結果、大腸上行結腸で虫垂の直ぐ傍に癌があることが分かった。すべての検査を終えて、本人含め娘達と医師の説明を聞いたときには妻は崩れ落ちるように涙を流し、自分を抑えきれない様子でひどく動揺していた。その日に入院ではなく後日となった。その夜から妻は毎日が不安で、ベッドに入るたびに涙を流して悲しみにさいなまれた。何故こんなにも健康だった妻が癌になるのか、私は信じられなかった。私が定年するまで傍で何一つ不満を言わずに支えてくれて、母として三人の子供達を立派に育て上げ、更に実母の介護を献身的に行っていた。こんなに一生懸命な妻に何故癌ができたのか、正直神様を憎んでしまった。できることなら私が代わりたかった。
数日後、妻に付き添い今後の事を話し合うために病院へ行った。消化器内科の医師(初診)が癌と診断した後、大学病院内でカンファレンスが行われ、消化器外科医師へ引き継がれた。その外科医師より今後の事についていろいろ説明を受けた(ステージⅣであった)。最初は本当に大丈夫なのかと疑っていたが、前向き且つ親切丁寧に患者の気持ちや考え方を十分聞き入れてくれて、医師も全力で癌と闘うので家族の協力をお願いしたいとあった。これほどいろいろなことを考え聞き入れてくれた医師に私は素直に全てをお任せするとお願いした。医師を信頼し、妻も十分頑張ったことで、7月に大腸癌と転移した肝臓の一部癌については一回目の手術で無事摘出できた。さらに追い打ちを掛けるように、大腸からの転移では無い女性特有の左肺に腺癌が呼吸器外科医によって発見された。さすがに妻は耐切れない思いで泣き崩れ、しばらくは立ち直れない様子であった。しかし、いつまでも落ち込んでいる時間は無く、次の手術やその先のことを考えていこうと妻を諭した。だが妻の気持ちはすぐには立ち直れなかった。少しでも気持ちを落ち着かせるためにと、子供達や妻の友人達と時間をかけて励ました。徐々にだが妻はそれに応えだした。そして、手術後の経過を観て9月に肺腺癌の摘出手術を受けることに踏み切った。おかげで手術は無事に終わり、術後の経過も良く順調に回復し9月末に退院できた。今では3回目の抗がん剤治療を終え、3ヶ月経過した結果はとても良い状態であると医師に告げられ、妻は以前と違い前向きに生きようと今後の治療を意欲的に受けて頑張っている。その陰には子供達の励ましと、今まで職場でお世話になった妻の友人達が根気よく励ましてくれたおかげだと感謝の気持ちで一杯である。一方、妻にとって抗がん剤治療は大変に辛いものであることは否めないのである。そんな中、息子の結婚が来春に決まり、妻はそれに向かって先日、花嫁の母親と衣装合わせに出向き幸せそうな笑顔で着物を選んでいた。これからもっと妻には長生きしてもらいたい。本人も孫の顔を観るのが楽しみだと明るくいつもの妻に戻りつつある。これからは私が妻に付き添って支えていきたいと心に誓た。